寒中お見舞い申し上げます

1500年代のヨーロッパの書物群を閲覧する機会に恵まれています。
職人たちのはなし声、歩き回る足音、活字鋳造の熱気、紙をさばく摩擦音、版面を形作る活字の群れ、インキのにおい、印刷機のきしみ、校正者のつぶやき・・・活版印刷黎明期の1500年代の印刷所と、昭和50年代の終焉を迎えようとする活版印刷所が幻想のように交錯します。かつて訪れたことのあるアントワープのプランタン・モレトゥス印刷博物館の佇まいなども思い出しました。当時はことさらに、印刷に興味を持っていたわけではなく、印刷所に働いていたので、何となく足を踏み入れたのに過ぎなかったのだけれど、一日をそこで過ごしてしまいました。建物に囲まれた四角の形をした中庭、光が差し込み思ったより明るい静謐な印刷所の残影。本来は、フリッツマイヤー美術館で、『狂女フリート』(ブリューゲル)を見る為にこの町に降り立ったのに、見ないままで立ち去らざるを得なかった。間の抜けた思い出までが浮かび上がってきました。
今年は、本づくりをしたい方たちと向きあって、「書物を作るなら、価値ある良い本を作ろうぜ」という雰囲気で行きたいなあ、と思っています。
寒中お見舞い申し上げます。今年もなお一層のご厚誼をお願い申し上げます。

 

寒中見舞い_forweb

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パソコンを操る

文字は書くものであって、打つものではありませんでした。複製ということでいえば、芋版を作ってペタペタ押して喜んでいたのは何歳頃だったのでしょうか。ゴム板や木版に、彫刻刀で絵柄や文字を刻みつけて、年賀状を作ったのは何年生のころだったのか。学級新聞を作る担当になって、謄写版印刷を行ったのは確か中学生のころでした。高校生のころには友人たちと語らい、地元の印刷屋さんに詩集を作ってもらったこともあったように記憶しています。

印刷会社に入って、お客様が使っている英文タイプライターというものに初めて出合い、驚いたり感動したり。それまでも見聞きしていたはずなので、出会って意識したのは、と言ったほうが正しいのでしょう。そして、目の前に展開する金属活字版印刷術の世界には、取り立てて興味があったわけではなかったのが正直なところです。

あれからヨンジュウネン。組版技法も印刷技法も様変わりしています。それらの事細かなことは、追々話ができればと思っています。今はパソコンの時代です。私は苦手です。ソフトもハードも困ったものです。ソフトと言えばソフトクリーム、ハードと言えばハードボイルドを思い起こすのですから、あとは推して知るべしです。そうは言いながら、印刷の世界でご飯を食べさせていただきました。「仕事を頼むぞよ」と、今も声をかけて頂くありがたいお客様のために、最善を尽くすためには、パソコンの一つや二つ恐れている訳にはまいりません。この辺もこれから追々お話をいたしましょう。

暮れも押し詰まった本日、「XPは来年の3月で終わりだから、俺が作ったパソコンを使ったらいいよ」とのご託宣のもと、ご長男がご帰省なさりて、あれよあれよという間にパソコンの交換を終えられて仕舞われたのです。呆気にとられている間もない、とは正にこのこと。私のパソコンは大丈夫なのか、新しいパソコンは大丈夫なのか。強烈な不安と疑心暗鬼に襲われたのですが、「ま、動いて使えればそれでいいじゃん」とすぐに立ち直りました。この気楽な態度が、社会生活を四十年も潜り抜けてきた秘訣です(ホント)。そのパソコンが私に味方するか否か、このようにしてブログを「打って」いるのです。

活版の植字職人たちの技が、パソコンソフトに移植されたのですから、一筋縄ではいかないのは当然です。一流の職人は道具を使いこなし、作品のためには自分で道具をさえも作ってしまいます。そのような人たちの助けを受けながら、求められる表現を実現して行きたいものです。

もうすぐ大晦日です。そういえば、今年のNHK「ゆく年くる年」に宮城県山元町の徳本寺が取り上げられるようです。私の先輩がご住職のお寺さんです。いつも眠っている時間なのですが、今年は起きていようかと思っています。   ゴ~ン   ゴ~ン   ゴ~ン   ・・・

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2013年12月21日、蕃山房のウェブサイトを公開しました。よろしくお願いします。

2013年12月21日、蕃山房のウェブサイトを公開しました。よろしくお願いします。

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