寒中お見舞い申し上げます

1500年代のヨーロッパの書物群を閲覧する機会に恵まれています。
職人たちのはなし声、歩き回る足音、活字鋳造の熱気、紙をさばく摩擦音、版面を形作る活字の群れ、インキのにおい、印刷機のきしみ、校正者のつぶやき・・・活版印刷黎明期の1500年代の印刷所と、昭和50年代の終焉を迎えようとする活版印刷所が幻想のように交錯します。かつて訪れたことのあるアントワープのプランタン・モレトゥス印刷博物館の佇まいなども思い出しました。当時はことさらに、印刷に興味を持っていたわけではなく、印刷所に働いていたので、何となく足を踏み入れたのに過ぎなかったのだけれど、一日をそこで過ごしてしまいました。建物に囲まれた四角の形をした中庭、光が差し込み思ったより明るい静謐な印刷所の残影。本来は、フリッツマイヤー美術館で、『狂女フリート』(ブリューゲル)を見る為にこの町に降り立ったのに、見ないままで立ち去らざるを得なかった。間の抜けた思い出までが浮かび上がってきました。
今年は、本づくりをしたい方たちと向きあって、「書物を作るなら、価値ある良い本を作ろうぜ」という雰囲気で行きたいなあ、と思っています。
寒中お見舞い申し上げます。今年もなお一層のご厚誼をお願い申し上げます。

 

寒中見舞い_forweb

カテゴリー: 未分類 パーマリンク

コメントを残す