新刊案内:地域開発と駅裏

2020年08月12日

近刊案内―9月上旬刊行予定「地域開発と駅裏」

コミュニティ主体の地域開発や地域マネジメントを展開する人々の待望の書。

「地域開発と駅裏」東北各県都にみる地域形成の不均衡と持続可能性への視座(佐々木秀之 著)
書誌情報:ISBN978-4-9909853-6-3 C0021 3,300円+税

先行予約開始 地域開発と駅裏

「緒言」より

 2019年12月に開催されたCOP25(第25 回国連気候変動枠組条締結国会議)において、16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリがこれまでの各国の不作為を指摘したことが全てを物語っている。地球環境という重大なテーマにおいても、こうした結果となってきた理由の一つに、後進国が裏側の存在とされてしまう状況があり、そういうことに対する視点の欠如が関係してくる。
 本書は日本における東北地方の地域開発を取り上げたものであるが、こうした世界的な関心と無関係なわけではない。本書では、明治期における産業革命以降の地域開発の展開について、「駅裏」を題材に述べる。「駅裏」は、資本主義的経済発展の過程で発生する、表と裏でいえば、まさに裏とされた存在である。

 裏とされた側を受け止めることは地域社会にも求められており、いかに負の部分を隠蔽せずにきちんと受け止め、それと向き合うことができるかということが、持続可能な開発の鍵と考えるのである。

 本書は、日本における地域開発を、いわば日本における後進地域である東北の視点から取りまとめている。その際、着目したのが「駅裏」と呼ばれる地域である。この「駅裏」の形成からその後の展開過程について、本書では通史的に検証し、明らかにしている。

 東日本大震災の復興過程では、経済優先の地域開発の限界があらためて指摘され、多くの人々の認識や行動を変化させている。東日本大震災からの復興過程では、多様な地域開発の手法や知見が導入され、それを世界各国が注目し、支えてきた。そこにおいて重要であったのは、地域コミュニティの活動であり、この活動の広がりなしに持続可能な開発はなしえないことも、あらためて認識される結果となった。阪神・淡路大震災以降、急速に数を増やしてきた非営利組織や社会課題をビジネスの手法で解決を目指す社会起業家の取り組みも顕著であった。

 東日本大震災からの復興過程では、SDGsが示す「誰一人取り残さない」社会を目指しての取り組みが具体的に展開されていたのである。こうした実践が、繰り返し展開され、社会的な評価を受けながら、さらに広がっていく仕組みづくりの構築が今後の課題である。